カットパスは、画像の特定部分を切り抜くための仕上がり線です。シール・ステッカーの作成では必要な工程ですが、実際の意味や作成方法をよくわかっていない方も多いのではないでしょうか。本記事では、初めてシール・ステッカーのネット印刷を行う方に向けて、カットパスを作成するための具体的な手順や注意点も紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
カットパスとは
カットパスとは、切り抜きやくり抜きする際にカットする場所をラインで示す仕上がり線のことです。シールやステッカーで変形の印刷物を作る時に必要となります。
ここでは、カットパスの用途や入稿時の注意点をみていきます。
カットパスの用途とその利点
例えば、専門業者に変形の印刷物の制作依頼をする場合は、カットパスの指定が必要です。また、個人でステッカーを制作する際にも、カットパスを作成した方がより自由なカッティングでオリジナリティのあるものを作ることができます。
また、商品のプロモーション画像を作成する際、商品を背景から切り抜いて別の背景に配置する場合にカットパスを使用します。カットパスの基本を理解することで、より効果的なデザインや印刷が可能になります。
入稿時の注意点
変形の印刷物を制作する際によりオリジナリティあるデザインでの印刷を可能にするカットパスですが、むやみにカットパス数を増やすことには注意が必要です。
例えば、ネット印刷で多数のカットパスが指定されている制作物を入稿する場合、カットパスの数に応じて、オプション料金が設定されている場合があります。
注文するネット印刷サイトの料金シミュレーションなどを活用して、必要なカットパス数と料金を見比べて検討してみましょう。
Illustratorでカットパスを作成する方法と作成手順
カットパスを作るために主に使われているのが、adobeのグラフィックデザインソフトIllustrator(イラストレーター)です。今回はこのIllustratorを使って実際にカットパスを作成する方法について2つ紹介します。
ソフトのバージョンや使用環境などにより、記事内の画面の表示や操作が異なる可能性もあるので注意してください。
カットパスを作成する前の事前準備
カットパスを制作する前に、以下の作業をして準備を完了させましょう。
- デザインを前面コピーする
- 「カットパス」レイヤーを分けて作成する
- 「デザイン」レイヤーの目隠しマークを押して非表示にする
方法① 画像トレースで作成する
最初にご紹介するカットパスの作り方は、「画像トレース」を用いた方法です。この方法はペンツールを使わないため、さまざまなやり方の中でも比較的簡単にカットパスを作ることができます。
まずは、カットパスを作りたいデータを開きイラストをクリックします。「ウィンドウ」タブから「画像トレース」を選び、画像トレース用のパネルが表示されたら準備完了です。
続いて、「プリセットメニュー」から「シルエット」を選択し、イラストの彩色部分が黒く塗り潰された状態にします。
次に画面上部のコントロールパネルから「拡張」を選んで実行してください。
イラストの黒い部分に白抜き箇所が残っている場合は、全てを黒く塗りつぶす必要があります。その時はシルエットを右クリックし「グループ解除」「複合パスを解除」を順に行いましょう。「ウィンドウ」から「パスファインダー」を表示させ「合体」の形状モードを選ぶと白抜き部分が消えます。
最後に、左のツールバーから塗りと線の色を変換すれば、カットパスの完成です。
カットラインとデザインの間を開ける
パネルやシールを作成する際、画像の形に添ってカットパスを作成する場合は、カットラインとデザインの間を一定の間隔あける必要があります。
反対にカットラインまで印刷をしたい場合(フチ無し印刷)は、作業中のずれによって印刷されていない部分が出てこないように、カットラインよりも外側に広くデザインを作成する必要があります。
デザインからカットラインまでの幅の基準は、印刷会社によって異なる場合があります。
入稿データを作成する前には依頼する印刷会社のテンプレートやデータガイドを必ず確認しましょう。
今回は例としてデザインとカットパスの間まで10mm開ける方法をご紹介します。
デザインとカットラインの間を10mm開ける方法
まず、プロパティのアビアランスの線を「20mm」に設定します。とても太い輪郭ができ、青いカットパスを中心として、内側と外側それぞれに10mm分の輪郭が作成された状態になります。
次に、「オブジェクト > パス > パスのアウトライン」を選択し、太くなった線を「パスのアウトライン化」します。
最後に、真ん中の抜かれた部分を削除し、「塗り」ではなく「線」へ変換。これでカットパスが完成です。
方法② ペンツールを使って作成する
ペンツールを用いてカットパスを作る方法は、イラストの輪郭をなぞってトレースするだけとシンプルです。イラストやロゴが表示されているレイヤーとは別に作る必要があるため、レイヤーウィンドウから新規レイヤーを追加してから作業をはじめましょう。
ベジェ曲線の活用とレイヤーマスクでの細かい調整
ベジェ曲線とレイヤーマスクを活用することで、画像のエッジをより正確に調整することが可能です。ベジェ曲線は曲線を細かく制御でき、レイヤーマスクは部分的な透過を実現するため、どちらも非常に柔軟に画像の細かな調整ができるツールです。
Illustratorはもちろん、adobeの画像編集ソフトPhotoshop(フォトショップ)でも応用することができます。
作成時の注意点
- カットパスの線の始点と終点は必ず繋がっていなければいけません
- 線を引いている間は空きがないかこまめにチェックしましょう
- イラストにくっつかない適度な距離で、なるべく曲線を使った滑らかなカットパスにすると綺麗な仕上がりになります
印刷データの確認事項を注意点
入稿時にデータの不備があると、印刷可能なデータを準備して再入稿する必要があり、納期が延びる可能性があります。また、不備扱いにはならずとも、手元に届いてから後悔してしまうようなミスにも気をつけなくてはなりません。
ここでは、入稿前データの確認事項についてみていきます。
1つのデータ内にカットパスが複数ないか
例えば、2つ以上のイラストや文字が並んでいるようなデザインでも、1種類の注文であればカットパスも1種類にしなくてはいけません。切り取るデザインが1つなのに対してカットパスが2つ以上ある場合は、不備扱いでデータの再入稿依頼扱いになります。カットパスを複数使ってデザインを切り分けたい場合は、デザインごとに発注とデータの作成をしましょう。
複雑な形状や鋭い角度になりすぎていないか
カットパスを作成する際は鋭角な線を多用したり、複雑な形にしたりしないように意識しましょう。90度未満の鋭角な線や複雑な形状のカットパスは、折り返しが綺麗に仕上がらなかったり、印刷会社によっては印刷機のエラーにつながったりする可能性もあります。
また、印刷会社によってはカットパス数(用いている線の数)によってかかるコストが変わるケースがあります。複雑な形状や鋭い角度の線を避けることは、仕上がりの美しさだけでなく費用削減にもつながるのでパス数をしっかりチェックしましょう。
角などの曲線は、一度鋭角につなげたあと「効果」タブから「スタイライズ」を選択し、「角を丸くする」という機能を駆使することで自然な角丸を作ることができるので活用してみてください。
Illustratorでカットパスを作った場合は、「ウィンドウ」タブの「ドキュメント情報」から「オブジェクト」でパス数を確認することができます。
ネット印刷サイトのデータ制作ガイドはチェックしたか
カットパスのデータについては、ネット印刷サイトによって細かいルールが設けられています。パス数の制限や余白の幅の規定、受け付けているデータの状態・種類など条件は業者ごとに大きく異なり、他のネット印刷サイトでOKだったものが別の印刷所ではNGといったケースもあります。
ほとんどの場合は、注文サイト内に「データ作成ガイド」や「ご利用ガイド」などのページがあるので必ず確認しましょう。
カットパスを深く理解して、自身で印刷発注ができるようになろう
カットパスに関する知識を深めることで、画像処理や印刷素材の作成において高いレベルの自主制作が可能になります。カットパスを理解することで、他の人に依頼せずとも自分自身で印刷発注をスムーズに行えるようになります。カットパスは、印刷物の特定の部分を切り抜く際に役立つ技術で、ステッカーやシール、アクリルキーホルダーなど多様なアイテムに活用できます。また、正確なカットパスを作成することで、印刷物の質を高めることができ、より高度なデザインも可能になります。
まずは基礎からスタートし、カットパスに関する知識を段階的に習得していきましょう。IllustratorやPhotoshopなどの画像編集ソフトウェアの使い方や、ペンツールや選択ツールの基本的な操作方法を学んでください。これにより、任意の形状を正確にトレースし、滑らかなカットラインを作成するスキルが身につきます。各ステップをしっかりと実践し、自信を持って印刷発注に挑戦してみてください。