デジタル印刷とは、印刷用の版を不要とする印刷手法です。従来の印刷方法と比較し、低価格で小ロットから印刷できるなどのメリットがあるため、注目を集めています。今回の記事では、デジタル印刷と従来の印刷手法の違い、メリットやデメリットを解説していきます。
デジタル印刷とは
デジタル印刷とは、データから紙に直接印刷する手法です。従来の印刷手法とは異なり、「版」を作る必要がないので短納期に対応できます。印刷ごとに宛名など一部分を変えるようなバリアブル印刷(可変印刷)や、小ロット印刷にも最適です。
デジタル印刷は、必要な量を必要なタイミングで印刷できることから、オンデマンド印刷とも呼ばれています。版が不要のためトータルコストの削減だけでなく、CO2排出量が減り環境負荷の低減につながるのも特徴です。
代表的なデジタル印刷機としては、インクジェット方式とトナー方式のものがあります。インクジェット方式は写真印刷などに適しており、トナー方式は文字中心の印刷などに適しています。
デジタル印刷は、印刷物の種類や目的、予算などを考慮して選択することが重要です。
オフセット印刷との違い
オフセット印刷とデジタル印刷は、それぞれ異なる仕組みで印刷を行う方法です。
オフセット印刷は、版と呼ばれる金属製の模板にインクを塗り、それをゴム製のブランケットに転写してから紙に印刷する方式です。
デジタル印刷は、データを直接印刷機に送り、インクを吹き付ける方式です。
それぞれの特徴は以下の表の通りです。
グラビア印刷との違い
グラビア印刷は、版に凹凸を刻んでインクを転写する方法で、高品質な印刷が可能です。写真や絵画など、繊細な表現が必要な印刷に適しています。
コスト面では、デジタル印刷は版代がかからないため、少量印刷の場合はグラビア印刷よりも安くなります。しかし、大量印刷の場合はグラビア印刷の方が単価が安くなります。
このように、デジタル印刷とグラビア印刷はそれぞれ異なる特徴を持っているため、印刷物の種類や目的、予算などに合わせて最適な印刷方式を選択することが重要です。
デジタル印刷のメリット
デジタル印刷にはオフセット印刷や、グラビア印刷と比べて以下のようなメリットがあります。
印刷完了までのスピードが速い
- オフセット印刷の場合、印刷前にデータを基に版を作成する必要があります。しかし、デジタル印刷はデータを直接用紙に印刷するため、版の作成工程が不要です。これが、納期を短縮できる大きな理由となります。それにより、数日中には納品できる場合も有、急ぎの印刷にも対応できます。
- オフセット印刷では、版に合わせて印刷機の調整が必要となります。一方、デジタル印刷はデータに基づいて印刷するため、機械設定が簡便で、印刷までの準備時間を短縮できます。
小ロット印刷でもコストを抑えられる。
- 版代がかからない
オフセット印刷では、印刷前にデータを基に版を作成する必要があります。この版の作成には費用がかかり、特に小ロットの場合、版代が印刷単価に大きな影響を与えます。一方、デジタル印刷は版を作成する工程が不要なため、版代がかかりません。これが、小ロット印刷でもコストを抑えられる大きな理由となります。 - 最小ロットの制限がない
オフセット印刷では、ある程度まとまった枚数を印刷する必要があります。これは、版代などの初期費用を回収するためです。一方、デジタル印刷は1枚からでも印刷することができ、最小ロットの制限がありません。そのため、必要な枚数だけ印刷することができ、無駄なコストを抑えることができます。 - セットアップにかかる時間が短い
オフセット印刷では、版に合わせて印刷機の調整が必要となります。そのため、ジョブごとにセットアップ作業が発生し、時間がかかります。一方、デジタル印刷はデータに基づいて印刷するため、セットアップにかかる時間が短く、印刷までの準備時間を短縮できます。人件費の削減にもつながります。
バリアブル印刷(可変印刷)が可能
バリアブル印刷とはデジタル印刷のバリアブル印刷は、1枚1枚異なる内容の印刷物を効率的に作成できる印刷手法です。顧客情報や商品情報などのデータをデータベースと連携させ、宛名、商品画像、クーポンコードなどを自動的に差し替えて印刷します。
従来の印刷方法では、このような個別化された印刷は難しく、手間とコストがかかりました。しかし、デジタル印刷のバリアブル印刷によって、小ロットでも高品質な個別化印刷を実現することが可能になりました。
オンデマンド印刷に対応しやすい
オンデマンド印刷は、必要なものを必要な時に必要な枚数だけ印刷するデジタル印刷の一種です。従来のオフセット印刷とは異なり、印刷版を作成する工程が不要なため、小ロット印刷や納期の短い印刷に適しています。
表現力が豊富
高解像度で印刷することができ、写真やイラストなどの細かい表現を鮮明に再現することができます。また、広い色域を表現することができるため、オフセット印刷では表現できなかった鮮やかな色彩や繊細なグラデーションを表現することができます。
印刷面が広範囲
デジタル印刷機には、ロール状の用紙に印刷するロールツーロール方式を採用しているものがあります。この方式では、長い紙に連続して印刷することができるため、壁紙や床材などの大面積の印刷に適しています。また、従来のオフセット印刷では印刷面が広範囲な印刷をする場合には、版を組み替えて印刷をしておりましたが、時間も要する上に、版と版のつなぎ目も出ておりましたが、デジタル印刷は版が無い為、シームレスな印刷が可能となり、継目の無い美しい仕上がりになります。
環境負荷が少ない。
デジタル印刷機は、版がない、予備紙が少ない、洗剤や現像液を使わない、オンデマンド印刷に対応、省エネ設計などの理由から、オフセット印刷機と比較して環境負荷が少ないと言われています。デジタル印刷機の普及は、印刷業界全体の環境負荷低減に貢献することが期待されています。
デジタル印刷のデメリット
デジタル印刷は、近年利用が拡大している印刷方式ですが、いくつかのデメリットも存在します。以下に、代表的なデメリットをいくつか挙げます。
オフセット印刷よりも色の再現性が劣る場合がある。
デジタル印刷は、データの品質が印刷結果に大きく影響します。解像度が低いデータや、色情報が正しく設定されていないデータを使用すると、色味がぼやけたり、色が再現されなかったりすることがあります。オフセット印刷の場合でも、データの品質が低いと、印刷結果に影響が出ますが、デジタル印刷ほど顕著ではありません。
印刷量が多い場合はコストが高くなる。
オフセット印刷は、版を作る必要があるので、初期費用が高くなります。しかし、印刷量が多くなればなるほど、1枚あたりの単価が安くなります。これは、版代を多くの部数で攤減できるためです。
一方、デジタル印刷は、版を作る必要がないので、初期費用が安く済みます。しかし、印刷量が多くなると、トナーなどの消耗品コストや人件費が高くなります。
デジタル印刷が適している印刷物
デジタル印刷は、小ロットや、短納期、写真等のCMYKを必要とする印刷、可変印刷やオンデマンド印刷など、オフセット印刷では実現できない機能も備えています。
印刷物の種類や目的、予算などを考慮し、それぞれの印刷方式のメリットとデメリットを理解した上で、最適な印刷方式を選択することが重要です。
デジタル印刷を活用して、高品質で短納期に印刷を進めよう
印刷業界では紙の印刷量が減少する一方、マーケティング手法の多様化・スピードアップにより多様な印刷物を短納期で届けることが求められるようになっております。
デジタル印刷を活用することで、小ロットで多様なデザインへの対応をスピーディに行うことが可能になります。デジタル印刷のメリットを理解して、一度印刷物のサンプルを依頼するなど、実際の仕上がりを確認してみましょう。